「工学部ヒラノ助教授の敗戦 日本のソフトウェアはなぜ敗れたのか」 今野浩

筑波大学での政治ゲームをその当事者が描いた黙示録。

理系って言うのは予算獲得のための骨肉の争いだけではなく、ポスト争いに関しても壮絶なものがあるのだなあとか、だけ。まあ、もちろん文系にだっていろいろと複雑な内情はあるのだとは思うのだけれど。ただ、教授のポスト争いの余波が、学生のカリキュラムにまで影響を与えるっていうのは、さすがに一般化できないひどい惨事だったのではないのかな。

著者はそういった数々の天才教授や、政界を相手取って孤軍奮闘するかと思えば、全くそんこともなく、大いなる荒波に飲まれて必死におぼれないように抵抗している姿がつづられている。主人公の目線としては若手研究者の忘備録的なかたりで、周囲の権力者に対して「おいおい、そんな才能あったり権力もってたりするなら教育改革に力入れんかい!」というスタンスであるが、読者としては「お前ももっと頑張れよ。。」と終始言いたくなる、ほとんどドラマが起きないストーリーであった。

ところで舞台となっている筑波大学というと、中高の部活の先輩が進学したというだけの印象で、どういった大学なのかよく知らない。たしかスポーツ工学的な分野で日本のメッカだったような気もするけど、なるほど計算機科学の先端教育機関としての夢が、物理帝国からの刺客によって侵略されたという歴史を知り涙するのであった。

工学部ヒラノ助教授の敗戦 日本のソフトウエアはなぜ敗れたのか