「時計館の殺人」 綾辻行人

ミステリー小説を読んでいるときに、ボクがけっこう気にしているのは最終的に何人くらい生き残るのかなあ、ということだったりする。本作では探偵役は最後まで現場にいらっしゃらずに、犯人のアリバイ工作に利用されているので、まあさすがに死ぬことはないだろうと安心できるし、あとは時計館に閉じ込められた主人公(?)を含め何人助かるんやろ、といった漠然とした予想をしながら読んだりする。

そして予想外にたくさんの人が犠牲になってしまいまして、ミステリーでのリアリティについてどういった展開が現状行われているの知らないのですけど、やっぱりこんだけ人が死んでいくっていうのはどうなんだろうとか、そういった不安感みたいなものをずっと抱えて読んでいくボクは、そもそも人が死ぬ話があまり好きではないようです。

メインとなっているトリックはさすがに凄いですね。全然分かりません。といっても20年以上前の作品なので、なんとなく既視感があるような気もしないでもないです。でもトリックだけでなく多数の伏線を一度にまとめて回収してくれるので、読後感はすっきりしたものでした。ミステリーのいいところは、この読後感ですね。キャラクターに感情移入する必要がないので(終わった頃にはたいてい死んでる)、そういった喪失感みたいなものとは無縁で、すぐ次の作品に移っていける。そういった意味で殺しまくりのシリーズものなので、機会があれば別の作品でも。

時計館の殺人 (講談社文庫)