「ティファニーで朝食を」/トルーマン・カポーティ、村上春樹訳

原作よりも映画の方が有名らしいけれど、ボクは映画はみたことない。オードリー・ヘプバーン演じるホリーは原作の魅力には及ばないといった意見がちらほら見られる。原作ではホリーは性に奔放で、一言でいうとビッチなんだけれど、主人公を含めた登場人物はみなホリーに夢中で、ついでに読者も夢中にさせてきたようである。

ボクはこれは結局のところ、テクストではいくらビッチを許容できても、それが実在の女優が演じている実写映画となって目の前に映し出されてしまうと、途端に冷めてしまうという心理を表しているのではないかと考えている。

原作ではホリーは最後に、主人公や周囲の人間関係をぶっちぎって海外に高飛びしてしまう。一瞬ではあるが主人公らと打ち解ける様子も見せてくれるのだけれど、まあフィクションだから許せるドジっ子メイドくらいにファンタジーな存在のヒロインである、と読者は思いたいのだが、実際にそういったこちらの期待した程度の親交すらもってくれない薄情な人は割とよくいるものなので、映画にするとやや現実に幻滅してしまうのも無理はない。

ティファニーで朝食を (新潮文庫)