映画「終の信託」

映画「終の信託」鑑賞

 最近だと、映画を見に行く前にある程度シナリオをサイトで確認して、さらに監督や役者のインタビューなどがあれば目を通して劇場に向かうことも増えてきた。ボク以外でもきっとそういう人は多くて、映画を観る前から大体どんな内容であるかは分かっている場合がある。CMも放映してましたし

 

 エンタメ性の高い映画で無い限り、そういった場合実際に鑑賞しているときは、どういった部分を楽しめばいいのか。それはテーマの社会性や、映画自体のリアリティ、迫真性であると思う。この映画は「それでもボクはやってない」を手掛けた周防監督の最新作である。終末医療と、尊厳死安楽死がテーマとなっている。

 

 徹底した取材の上によって前作以上に、その迫真性が増している。病院での場面では役所広司の死を控える演技に見どころがあるが、そこだけにとどまらず検察庁内でのやりとりが圧巻である。やや過剰とも感じるシーンだが、製作者の問題意識がありありと伺える。

 

 「それでもボクはやってない」のエンディングは、痴漢冤罪の裁判をする加瀬が、有罪判決を受け控訴する場面で終わるのだが、この作品も結末は最後2つの道へと収束していくシンプルな構成だ。つまり主役となっている医師の医療行為が、「犯罪である」か「犯罪でない」かという2つである。もちろんこれは「犯罪である」に決まっているわけだが(そうでなければ映画として何の社会風刺にもならない)、それでも前半の終末医療を丁寧に描くことによって、医師が愛ゆえの殺人を認める場面が最大の高まりとなって映画を盛り上げている。

 

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